グッドハートの法則

グッドハートの法則(Goodhart’s law)とは、特定の指標が人々の行動を評価するための目標として設定されたとき、人々は目標に対してなんとか達成しようとその指標を操作するようになり、その結果その指標は測定しようとした本来の目的からかけ離れて適切な指標ではなくなる現象のこと。

経済学や政治政策、データサイエンスの領域において特定の指標が行動の目標に設定されると、その指標が本来の意味を失うか、歪められる可能性がある。特に、システムや個人がその指標の数値を改善するために行動を調整し始めると、指標が本来の目的を果たさなくなるというものである。

例えば政府が経済成長を測るためにGDPを主要な指標として採用して政策目標とする場合、政府はGDPを上げるために短期的な対策を講じる可能性があり、環境汚染や不平等の増大など長期的な問題が無視されるリスクが生じる。学校にて生徒の理解力の向上を改善するために「テストの点数」を目標の指標にした場合、教師や生徒は試験対策など「テストのためだけの学習」を行うようになり、本来の物事への理解がおろそかになりやすい。

目標が設定されるとそれを達成しようとする圧力がかかり、本来のプロセスが歪められて元々の目的が失われてしまいやすい。データドリブンの組織が目標設定を行う際、指標が現実的な目標と一致し続けるよう注意を払う必要がある。

イギリスの経済学者チャールズ・グッドハート(Charles Goodhart)が1975年のイギリスの金融政策に関する論文でこの理論を提唱した。彼による定義は「測定されると決まった指標は、それが目標にされた瞬間に有効性を失う」である。