オンボーディング

オンボーディング(on-boarding, onboarding)とは、企業が新しく採用した人材を組織に配置し、その一員として文化や仕事の進め方に慣れ、知識やスキル、行動を身につけてもらう教育プロセスのこと。新人研修。

そこから転じて、サービスやソフトウェアの新規ユーザーに対し、機能の使い方に慣れて継続的な利用を促す一連のプロセスやコンテンツのこともオンボーディングと呼ばれる。アクティブユーザー化、顧客化、継続利用に向けた初期のカスタマーサクセスのプロセスの一つ。チュートリヤルやガイドツアー、ゴールまでのステップ表示などが該当する。

ウォールド・ガーデン

ウォールド・ガーデン(walled garden)とは、もともとは「壁に囲まれた庭」の意味だが、そこから転じて「クローズド・プラットフォーム」の意味を持つ。一部のユーザーに利用を限定して、そのユーザーにできるだけそのプラットフォームの中で活動してもらうような仕組み、戦略のこと。プラットフォーマーは、そのウォールド・ガーデン内のアプリケーションやコンテンツを制御できる。

マイクロソフトのWindowsやアップルのiOSの事業、Google、Facebookなどのビジネスは「できる限りその場所にとどまらせる」仕組み、つまりクローズドなプラットフォームであり、ウォールド・ガーデンと表される。テクノロジーとデータを活用し、ユーザーへのコンテンツ提供や活動を自らのプラットフォーム内にあるエコシステムで賄うことができる。

GoogleやFacebookが一部の国で無料や低価格のWi-Fiを提供したり、通信費の一部を負担したりしている取り組みも、ウォールド・ガーデンの一環である。

リカレント教育

リカレント教育とは、義務教育等を終えて社会人になった人が、教育機関に入り直して教育を受けること。あるいは、そのように本人が望めば年齢や時期に関わらずいつでも学べる教育システムのこと。

スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーン(Gösta Rehn)が提唱した。生涯にわたり教育と労働、余暇などを交互に行ない、さらなる技術や知識、心の豊かさを身につけて再び社会に貢献ができる、とされる。生涯学習のあり方の一つ。

リカレント教育の普及には、受け入れる教育機関の充実に加え、企業側の柔軟な雇用制度や勤労条件の整備、教育経費の増大などの課題がある。

デジタルタトゥー

デジタルタトゥー(digital tattoo)とは、いったんWeb上で公開された書き込みや画像、情報は、一度拡散されるとコピーされて残り続け、後からの消去が困難であることを表す表現のこと。タトゥー(入れ墨)のように完全に消すのは難しいという比喩である。

TwitterやInstagramといったSNS、ブログ、電子掲示板などに投稿した書き込みは、コピーされたりまとめサイトに転載されたりなどで、本人の意志とは関係なく半永久的に残り続けてしまう。そのため、軽はずみないたずらや悪行の投稿から個人の特定や個人情報の流布に至ったり、不用意に個人情報を投稿して事件に巻き込まれるといった可能性や危険性がある。

2013年2月のTEDカンファレンスでのJuan Enriquez氏の講演で言及され、広く知られるようになった。

Juan Enriquez on how to think about digital tattoos | TED Blog
Juan Enriquez: Your online life, permanent as a tattoo | TED Talk

カナリアリリース

カナリアリリース(Canary Release)とは、プロダクトやサービスの新機能を一部ユーザーのみが利用できるようにリリースし、新機能に問題がないことを確認しながら段階的に全体に向けて展開していくデプロイ手法のこと。あるいはその目的で公開されたバージョンのこと。「カナリアデプロイ」「Canary版」。

本番環境の全体に展開するのではなく、並行して一部ユーザー向けに小規模にリリースし、負荷などの問題が発生したら現行のバージョンに戻すことができる利点がある(ロールバック)。A/Bテストや、新サーバーへの切り替え時に用いられるブルー・グリーン・デプロイメントに似た手法といえる。

カナリアリリースは、かつて炭鉱でのガス漏れ事故を防ぐために、無臭ガスに敏感な鳥(カナリア)を鳥かごに入れて炭鉱に持ち込んだ、生理学者John Scott Haldane氏による実験が由来とされる。

ペイウォール

ペイウォール(paywall)とは、WebサイトやWebメディアがコンテンツや記事を有料化し、対価を支払ったユーザーや有料会員だけが全文の閲覧や全コンテンツの利用をできる仕組みのこと。Webメディアの収入源として広告収入に加えてユーザー課金収入が増えることで、より安定した運営につなげられる。

対価を支払ったユーザーだけが「壁で囲い込んだ中」に入れることに由来する。

コンテンツの一部の閲覧は無料だが全文を見るには有料という形式や、一定回数までのコンテンツ閲覧は無料だが回数超過分の閲覧は有料といった形式、有料会員が紹介したURLであれば制限回数内は無料で閲覧という形式などがある。

2010年代半ばよりアドブロッカーの台頭に伴う広告収入の減少などをきっかけに、新聞社や専門領域のWebメディアを中心にペイウォールの手法が導入されるようになった。

メディアとしては一定の収益を確保できる一方で、いかにして有料購読者を増やすかといったビジネス的な課題や、検索エンジンに対する技術的に適切な配信も必要になってくる。

サバンナ効果

サバンナ効果とは、入り口付近よりも空間の奥の方の照明を明るくすることで、人が安心感を感じて奥に進むという心理的効果のこと。人は暗い所から明るい所へは引き寄せられ、明るい所から暗い所には入りにくい習性があり、それを利用している。

暗い森の中で迷った人が、森の外に広がる太陽の光を浴びた明るい草原(サバンナ)を見て、暗い森から草原へ駆け出すという例え話から「サバンナ効果」と名前が付けられた。

入店を促進するための店舗の照明やデザイン、行動設計で用いられる。

イケア効果

イケア効果(IKEA effect)とは、自分が作ったものや関与したプロジェクトに対して、その価値を過大評価する心理効果のこと。人は手間をかけることで思いや愛着が強まり、自分のみならず他人にとっても高い価値を持つものと錯覚する効果がある。

自分が全面的に関与したり、うまくいったものに対してはイケア効果は強く表れる。一方で、関与が一部に限定されていたり、関与したが失敗したものに対しては、イケア効果は表れにくい。

マイケル・ノートン(Michael Norton)、ダニエル・モション(Daniel Mochon)、ダン・アリエリー(Dan Ariely)が2011年に論文で発表した。彼らは被験者への実験に用いたイケアの組み立て家具にちなんで、この効果を「イケア効果」と呼んだ。認知バイアスやアンカリング効果の一つ。

コンプレックス商材

コンプレックス商材とは、ダイエットや薄毛治療、美容、整形といった人間が抱えるコンプレックスや劣等感に訴求する商材、サービスのこと。「痩せたい」「モテたい」「きれいになりたい」といった消費者の欲求、感情を解消することを謳っている。悩み解決型商材。

対象のコンプレックスや感情を解消するものもあれば、中には実際の効果が小さかったり、効果がまったく認められないような詐欺商品も存在する。

美容系や医療系、健康食品系のカテゴリーに含まれる商材が多く、広告宣伝の表現に規制やルールが設けられているケースがある。アフィリエイト広告や情報商材経由で流通するものも多くあり、グレーではない適切な表現が求められている。

一部のメディアやアドネットワークでは、コンプレックス商材の広告を掲載不可にしているところがある。

ホモフィリー

ホモフィリー(Homophily)とは、同じような属性や価値観を持つ人とつながろうとする人間の傾向のこと。ソーシャルネットワーク研究の基本的な考えの一つで、同質性とも呼ばれる。「類は友を呼ぶ」「似たもの同士」。

人は同じ属性の相手に親近感を持ちやすく、またホモフィリーの相手から影響を受けやすい。

一方、同じ属性や価値観を持たないが利益があるためにつながろうとする関係性のことを、ヘテロフィリー(Heterophily)という。

一般的には、組織や社会はヘテロフィリーの関係でつながっているが、その上でホモフィリーの関係性が徐々に構築されていく。