二つ名

二つ名とは、本名以外の正式名称ではない呼び名のことである。「別名」や「あだ名」を含む場合もあるが、その対象の特徴や性質、印象を端的に表現した言い回しを「あだ名」「通り名」などと区別して「二つ名」と呼ぶことが多い。読みは「ふたつな」。

個性的な戦国武将、著名人、スポーツ選手(チーム)、政治家などに対して、尊敬や畏怖、崇拝の念を込めて付けられることが多い。「甲斐の虎」「東洋の魔女」「平成の怪物」「浪速のジョー」といった著名な表現例がある。

近年、お笑いのテレビバラエティー番組でお笑い芸人に付けられる異名キャッチコピーなども「二つ名」に該当する。

アウトリーチ

アウトリーチ(outreach)とは、「外に向かって手を差し伸べること」を意味する英語だが、社会福祉などの領域において援助が必要でありながら自ら援助にアクセスできない人々に対して公的機関などが働きかけて支援を行うことを表す。「アウトリーチ活動」のように用いる。

生活上の困難を抱えていながら援助の必要を自覚していない、もしくはその相談に出向こうとしない人々には支援が届かないことが多い。そのような人たちに対して働きかける一連の取り組みのことである。領域によっては「訪問支援」のことを指す場合もあるが、必ずしも訪問支援だけがアウトリーチではない領域もある。

社会福祉の領域以外でも、公的機関や文化施設がその活動に関心を持ってもらうことを目的として行う出張活動や出張イベントのことを指すことがある。その施設外で行われるワークショップやコンサートなどが該当する。

ビジネスの領域においても、潜在顧客へのアプローチを目的としてその界隈の著名人に自社の商品やサービスを売り込んだり関係性を作ったりするマーケティング活動のことを指す。「アウトリーチマーケティング」のように用いる。影響力を軸にアプローチする点でインフルエンサーマーケティングと類似する。

アトム化(原子化)

「アトム化」とは、「孤立化」という意味で用いられることが多い。もしくは「これ以上分割できない小さな単位に分割する」という意味でも用いられる。「原子化」ともいう。

「アトム」は「原子」を意味するが、ギリシャ語で「それ以上分割できないもの」という意味の「atomos」に由来する。

例えば社会などの共同体が近代化する中で、人間が労働の役割を持った機械部品のような存在になってしまい、人間らしさや個人としての存在を失ったり周囲との関係が希薄化したりする様子や現象を「人間疎外」「アトム化(原子化)」と呼ぶことがある。

本来の共同体は人間の集まりである。しかし、近代化が進み技術が発展する中で機械化されたものが増え、それを維持するために人間が労働する、つまり機械が人間を必要としその維持を目的として人間が機能するという状況が生まれてきたということである。

FMCG (fast-moving consumer goods, 日用消費財)

FMCGとは、「fast-moving consumer goods」の略で、消費者向けの日用消費財のことである。比較的短期間で消費される低価格の製品であり、食料品や飲料、洗剤や洗面用品、化粧品、一般用医薬品、文房具、消耗品などの非耐久消費財が該当する。

コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ディスカウントストアなどの小売店は、限られた商品棚の回転率を上げるためにこのFMCG(日用消費財)を中心に取り扱っている。

GA (general availability, 一般公開版)

GAとは、「general availability」の略で、ITやシステム、ソフトウェアの領域では一般公開されたバージョンのことを表す。「正式版」「正規版」のこと。「GA版」とも呼ばれる。

ITやソフトウェアの開発の最終段階において、開発者がテストやデバッグを終えて一般ユーザー向けに公開したバージョンのことである。開発初期や開発途中の試作版は進捗に応じて「アルファ版(α版)」「ベータ版(β版)」「プレビュー版(PR版)」などと呼び、改善や検証を重ねていく。これらの一般公開前の試作版と区別するために「GA版」と呼ばれる。

OOTB (out of the box, 入手後すぐに利用可能)

OOTBとは、「out of the box (アウト・オブ・ザ・ボックス)」の略で、ITやシステム、ソフトウェアの領域では「入手後すぐに利用できる」という意味で用いられる英語のフレーズ。元は英語で「箱から取り出して」の意味。

製品やソフトウェアを導入する際、ユーザーによるインストールや初期設定が最初に必要となる場合があるが、そのような事前の設定の必要なく入手後すぐに本来の利用目的で利用できる状態を表す。また、カスタマイズやオプション設定のない状態の「標準機能」という意味で用いられる場合もある。その意味では「バニラ」と類似する。

ゼロトラスト・セキュリティモデル

ゼロトラスト・セキュリティモデル(zero trust security model)とは、セキュリティの対象となるものに接続するものを基本的にすべて信用せずに安全性の検証を行うセキュリティモデルのこと。単に「ゼロトラスト」とも呼ぶ。

従来のセキュリティモデルは、例えば社内と社外のようにネットワークを分離してその境界線上にセキュリティ対策を施す「境界型防御」の考え方を中心に据えていた。境界型防御においては、セキュリティ対策によって外部の脅威から守られている内側は安全とされてきた。しかしクラウドサービスやモバイル端末、「BYOD (Bring Your Own Device)」の利用などが増加する中、境界線はあいまいになり境界型防御が機能しなくなり始めた。そういったセキュリティリスクが増加する中でゼロトラストの考え方に注目が集まるようになっている。

KOC (Key Opinion Consumer)

KOCとは、Key Opinion Consumerの略で、中国の消費者に影響力を持つインフルエンサーのこと。特定のカテゴリーやジャンルに特化して影響力を持つ「KOL (Key Opinion Leader)」よりも立場は一般の消費者に近く、広い範囲の情報を扱うことが多い。

KOLには及ばないことが多いが、ソーシャルメディアのWeiboやWeChat、動画SNSなどで多くのフォロワー数を抱える。

マスメディアの情報がそれほど大きな信頼を得ていない中国では、KOLやKOCを活用したマーケティングやプロモーションが普及し、消費者もより信頼のある新しい情報を得るためにKOCアカウントをフォローしている。

デスティネーション・ストア

デスティネーション・ストア(destination store)とは、消費者が「そこに行けばきっと(探している/ほしい)商品があるに違いない」と期待して目指して来店するようなお店のこと。消費者がその店の名前や場所を知っていることがほとんどで、その商品のカテゴリー内で純粋想起第一想起として挙げられる店舗でもある。消費者が目的や動機を持って来店する「目的来店」の来店先も含み、むしろより特別な目的を持って想起する。

圧倒的な品揃えの量販店や総合店の場合もあるが、専門性や趣味性の高い領域の商品を品揃え深く扱い、また店主のこだわりや価値ある希少な商品を扱うお店、そこでしか体験できないようなお店のことを指すことが多い。

ブーリアン型(論理型, ブール型)

ブーリアン型(boolean datatype)とは、プログラミングなどにおける真理値(真偽値)を扱うデータ型のこと。「true (真)」もしくは「false (偽)」のいずれかの値を持つ。二者択一条件を表し、AND条件やOR条件などの条件分岐、論理演算などにおける重要な変数である。単に「ブーリアン (boolean)」、あるいは「論理型 (logical datatype)」「ブール型」などとも言う。

例えば、ユーザーが特定条件を満たしているかどうかの判断の際などに用いられる。

パワーユーザーカーブ

パワーユーザーカーブ(power user curve)とは、ユーザーが該当の製品やサービスを1カ月(もしくは1週間)の間にアクティブに利用した日数によってユーザーのエンゲージメントを把握しようとするヒストグラム(分布のばらつき)のこと。該当の製品やサービスを毎日のように頻繁に利用し、高いエンゲージメントや愛着をもって夢中になっているユーザー「パワーユーザー (power user)」の存在を把握するのに用いられる。

SaaS領域などのスタートアップ企業において、パワーユーザーの存在は貴重で大きな価値を持つ。そのパワーユーザーの存在や状況の把握としてパワーユーザーカーブが用いられる。1カ月間アクティブな利用日数として1日から30日をグラフの横軸に置き、そのユーザー数をヒストグラムで表す(このパワーユーザーカーブの表現を「L30」と呼ぶことがある)。

パワーユーザーカーブ(L30)
▲パワーユーザーカーブ(L30)

グラフの右側で日数が増えるほどユーザー数が再び多くなってカーブが上がっている場合、一定のパワーユーザーが存在していることになる。

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直リンク(インラインリンク)

直リンクとは、インターネット上に公開されている画像などのメディアファイルやデータファイルのURLを、別のWebサイトから直接参照すること。インラインリンク(inline link, hotlink)ともいう。

例えば、他サイトの画像をそのURLのまま自サイトのページに直接貼り付けて埋め込み表示させることなどが該当する。この場合、自サイトのページが参照されるたびに画像の設置された他サイトのサーバーにリクエストが発生して負担をかけるため、マナー違反として望まれないことが多い。Webサイトやサーバーによっては禁止されていたり、技術的に外部からの参照をブロックされていることもある。

一方、直リンク(インラインリンク)の違法性に関してはさまざまな議論があるが、少なくとも日本においては著作権の侵害、公衆送信権の侵害には該当しないという判決がいくつか出ている。

ハルシネーション

ハルシネーション(hallucination)とは、生成系AIなどの人工知能が現実や事実に基づかない情報を生成する現象のこと。まるで人工知能が幻覚(ハルシネーション)を見ているように事実とは異なる「もっともらしい嘘」を出力することである。

生成系AIでは人間の入力に対して回答を出力するが、どのような学習データが用いられたのかがわからなければその真偽の判断は人間には困難になる。

例えば、人工知能が学習に用いたデータとは異なる事実を出力したり、学習に用いたデータには存在しない事実を出力することもある。

「ChatGPT」などの生成系AIが広く利用され始めてから注目されるようになった。

アウトパフォーム

アウトパフォーム(outperform)とは、金融や投資の領域において株やファンドの運用指標がベンチマークとなる基準を上回っていること。ファンドや銘柄、ポートフォリオなどの運用成績が、「日経平均株価」「TOPIX (東証株価指数)」「S&P 500」といったベンチマークに対して収益が上回っている状態を指す。もともとは「~よりパフォーマンスが優れている」を意味する英語である。

ビジネスの領域においても、何かの基準よりも上回っている状態を「アウトパフォーム」と呼ぶことがある。

アウトパフォームに対して、ベンチマークを下回っている状態を「アンダーパフォーム」、ベンチマークに近い状態を「ニュートラル」と呼ぶ。

タグライン

タグライン(tag line)とは、ブランドや商品の主義主張を表明するメッセージとして短い言葉で表したもののこと。顧客層に対して約束する機能的あるいは感情的な価値を簡潔に伝えるためのメッセージ、スローガンである。

短く誰にでもわかる表現であることがほとんどであり、長期間に渡って使用することを前提としている。顧客層に対してだけでなく、社内に対しても自分たちの主義主張を体現するものとして扱われる。CI(コーポレートアイデンティティ)の要素の一つ。

類似するものにキャッチコピーがある。キャッチコピーも顧客に対してメッセージを簡潔に伝える表現だが、「ターゲット層により異なる」「変化する」「一時的なキャンペーン向けである」「販売促進の性格が強い」といった特徴がある。

P2C (person to consumer)

P2Cとは、「person to consumer」の略で、個人が企画、生産した商品を消費者に直接販売するビジネスモデルのこと。特に著名人やインフルエンサーといった影響力を持つ個人がその発信力を生かし、小売店などの中間業者を介さずにECなどで消費者に直接販売するものを指すことが多い。

ソーシャルメディア(SNS)や手軽に利用できるサービスが普及し、一定のファンやフォロワーを持つ個人が自身の企画した商品を販売することが容易になった。一般人でも注目を浴びることができること、商品の制作や流通を大きな負担なく依頼できること、広告やPRを含めた販売促進も個人の発信力と少額の広告などで賄えることなどが揃い、仕組みとして成立したと言える。

企業が商品の企画製造から販売までを垂直統合して手掛ける「D2C (Direct to Consumer)」と類似するが、主体が企業か個人か、ブランドとして初期の顧客層がどれだけいるかなどに違いがある。

極北

極北とは、物事が極限まで達したところや状態のこと。「極致(極地)」「最果て」「極み」「突き詰めた状態」と似たニュアンスで用いられる。読みは「きょくほく」。

もともとは「北の果て」「最北」の意味で、その地域の最も北の場所や北極を指す。そこから派生して、物事の極限に至った状態を呼ぶようになった。ある種の称賛や驚嘆を伴って用いられる。

カンバセーショナルコマース

カンバセーショナルコマース(conversational commerce)とは、メッセージアプリやチャットボット、音声アプリといったオンライン上のコミュニケーションチャネルを通じて、消費者とリアルタイムで対話をしながら購買を促すeコマースのこと。「会話型コマース」「会話型EC」などとも呼ばれ、「Cコマース」と略されることもある。

Webサイトに設置されたチャットボット、LINEやFacebook Messenger、WhatsAppやWeChatをはじめとしたメッセージアプリなど、さまざまなコミュニケーションチャネルで消費者と会話をやりとりしながら展開するeコマースである。ライブ配信によるライブコマースも広義としては含まれる。2010年代後半から世界のEC市場の一角を占めるようになった。

データを活用してそれぞれの消費者に対してパーソナライズされた対応を取ることができる。対応はAIを活用して自動化されたものと企業の担当者が直接行うものを組み合わせることで、より多くの顧客に対応できる。

EEA (欧州経済領域)

EEA(European Economic Area)とは、欧州経済領域のこと。EU(欧州連合, European Union)にEFTA(欧州自由貿易連合, European Free Trade Association)のノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインを含めたものである。

EFTAの加盟国がEUに加盟することなくEU市場に参加できるように1994年に発足した。EFTA加盟国のうち、スイスはEEAには不参加である。

ハドルミーティング(ハドル会議)

ハドルミーティング(huddle meeting)とは、必要なタイミングにて最低限のメンバーで行う短時間のビジネスミーティングのこと。必要なときにさっと関係者が集まり、ミーティングが終わればすぐに解散してそれぞれの仕事に戻るといったスタイルの会議である。ミーティングは10分から30分程度とされる。「ハドル会議」ともいう。

思いついたタイミングで短い時間で情報共有を行うため、早い段階での内容共有や方針の確認、指示命令、生産性の向上などが期待できる。また会議時間の短縮化にもつながる。

「huddle」は「身を寄せ合う」「しゃがむ」などを意味する英語だが、アメリカンフットボールにおいてプレイの合間にフィールド上で円陣(ハドル)を組んで行う短い作戦会議のことも指す。ハドルミーティングはこのアメフトのハドルに由来する。