ポップコーン脳

ポップコーン脳(popcorn brain)とは、スマートフォンなどのデジタルデバイスやソーシャルメディアによる通知、それらによるマルチタスクに夢中になるあまり、普段の生活への関心を持てなくなる精神状態のこと。集中力が低下し、思考が次々と飛び移って一つのことを深く考えることができなくなったり、多くの情報から必要な情報を選び出すことが困難になったりする。ストレスの増加、感情コントロールを含む注意欠陥、不安の増加、人間関係への悪影響などを招きやすい。

ソーシャルメディアのタイムラインをはじめとしたインターネットで次々と新しい話題に触れたり、頻繁な通知を受ける状態に夢中になり、刺激を求め続けてそこから離れられなくなってしまうことに起因する。それらが気になるあまり、普段の生活や人間関係に支障をきたす心理的状態である。

熱いフライパンの中でポップコーンが次々とはじける様子を思考がバラバラに飛び散ってしまう状態に例えたことに由来する。アメリカのワシントン大学のデビッド・レヴィ教授(David M. Levy)が2011年の調査研究で発表した。彼の研究によれば、過去20年で人間が1つのことに集中できる時間が2分30秒から47秒にまで大きく減少したとされる。

スイングステート

スイングステート(swing state)とは、アメリカ合衆国の州のうち、民主党と共和党のいずれの支持率も拮抗して支持基盤が盤石ではなく、有権者の浮遊票の多い州のこと。アメリカ大統領選挙の度に勝利政党が変わりやすく、振り子のように結果が変動しやすい「揺れる州」の激戦州であることからそう呼ばれる。

スイングステートは10~15州程あり、代表的な州としてフロリダ州やオハイオ州、ペンシルベニア州などが挙げられる。人口動態の変化などによりアメリカ大統領選挙の度に少しずつ状況は変化している。

大統領選挙では各州の人口に応じて選挙人がそれぞれ割り当てられる。大半の州では勝者の候補が州の選挙人をすべて獲得する「勝者総取り方式」を採用するため、選挙人の割り当ての多い州、つまり人口の多い州での勝利が鍵を握る。スイングステートでの選挙結果が全体の勝敗を左右するため、選挙運動では人員や資金などが重点的に投入されることが多い。

パラシュート人事

パラシュート人事とは、企業が中途採用した人材を役員などの経営人材にすぐに登用すること。組織内でしばらくキャリアパスを積んだり現場経験を踏んだりすることなく、要職に就くことである。

通常の人事制度ではステップを踏んで役職が上がるのに対し、その課程を踏むことなくまるで空からパラシュートを使って上位の役職に舞い降りた様子を想起させることに由来する。

企業にとって中途採用は優秀な人材を迅速に獲得できる一方で、その人事異動や配置によっては長く勤務する従業員の反発を招くことがある。特に役員やマネージャーは社風への理解や人格などを備える必要がある。またパラシュート人事で登用した人材が期待する結果を出せない場合は、採用者の責任が問われることもある。そのため企業としては早急な経営人材への登用がマイナスに作用するリスクがある。

レ点ビジネス(レ点営業)

レ点ビジネスとは、契約時に通常プランに加えて一定期間無料の有料オプションサービスを抱き合わせて申し込みを勧める営業手法のこと。主に携帯電話やスマートフォンなどの契約で見られる。契約書類にオプションサービス一覧が列挙され、利用者にチェック欄へ「レ点」を記入させて同意を得たとみなす手法に由来する。「レ点営業」「レ点商法」などとも呼ばれる。

格安での端末の購入やキャッシュバックの条件として、オプションサービスを必須とする契約の場合もある。また販売店や代理店にて、オプションサービスの契約数を営業成績として評価するケースもある。

そのため、利用者がオプションサービスの内容をよく理解せずに契約したり、無料期間を過ぎて有料利用になったことに気付かず意図しない支払いを続けるといったケースが発生する。オプションサービスは利用者による解約が必要であり、苦情やトラブルにつながりやすい。

携帯電話各社はこの手法による契約の健全化に取り組んでいるとされるが、依然としてトラブルは発生している状態である。

BPaaS (Business Process as a Service, ビーパース)

BPaaSとは、Business Process as a Serviceの略で、企業が活動する上で発生する一部の業務プロセスを外部にアウトソーシングできるクラウドサービスのこと。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)SaaS(Software as a service)を組み合わせたビジネスモデルである。読みは「ビーパース」。

人事や総務、経理、情報システムといった間接部門の業務などをクラウドサービスに任せることで、企業は優秀な人材を自社のコア業務に専念させることができる。BPO事業者も「BPaaS」と大きく掲げていなくても、人的リソースに頼るオフショアなどからSaaSへ運用を移行してサービス提供していることも多い。

企業は業務プロセスにSaaSを組み込んでアウトソーシングし、人材不足の解決と生産性の向上を推し進められる一方、各種の個人情報や重要データの取り扱いを外部に委託することよるセキュリティリスクを負うことになる。

アイソメトリックイラスト

アイソメトリックイラスト(isometric illustration)とは、「アイソメトリック・プロジェクション(等角投影法)」と呼ばれる製図の手法を用いて対象物を斜め上から俯瞰して立体的に描かれたイラストのこと。単に「アイソメ」「アイソメ画像」など略して呼ばれることもある。

「アイソメトリック・プロジェクション(isometric projection, 等角投影法)」は対象物を立体として捉え、構成する3つの軸(高さ、奥行き、横幅)の角度をそれぞれ120度の等角になるように描く。そのため、平面上で対象物を三次元的に表現できる。

このアイソメトリックの図法は建築や製品設計といった領域での使用が多かったが、2010年代後半頃からWebサイトのデザイン表現のトレンドの一つとなった。俯瞰して立体的に捉えられるという特徴を持つ。

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マジックナンバー分析

マジックナンバー分析(magic number analysis)とは、ユーザーが特定のアクションを何回以上行うとサービスや製品の継続利用や売上に大きく寄与するのかを分析すること。

ここでの「マジックナンバー」とは、サービスや製品の継続利用や売上に大きく寄与すると考えられる一定期間内のユーザーの特定アクションの実行回数のことを指し、プログラミング領域での意味とは異なる。主にスタートアップやSaaS、プロダクトアナリティクスなどのビジネス領域で用いられる。

一般的には「初期の起点行動からの一定期間」「特定のアクション」「実行回数」の3つの要素を見つけ出す必要がある。

例えば、Facebookでは「会員登録から10日間で7人と友達になる」ことでサービスの継続率が大きく向上することが分析で判明し、それを元に多くの施策が行われたとされる。このように継続利用のトリガーとなる条件を見つけ出し、それをKPIとして扱うことで、サービスや製品の収益性を大きく成長させることができる。

Rabbit Hole Effects (ウサギの穴効果)

Rabbit Hole Effectsとは、人はソーシャルメディアやインターネット上で類似したコンテンツを連続して消費すると、さらに追加で類似するコンテンツを選択してやめられなくなる傾向や効果のこと。「ウサギの穴効果」などと訳されることがある。

ソーシャルメディアで似たテーマのコンテンツを見ていると途中でやめられなくなる様子を、ルイス・キャロル作の小説『不思議の国のアリス』で主人公アリスがウサギの穴に落ちてワンダーランドへと迷い込んだことに例えて「ウサギの穴にはまって抜け出せない状態」と表したことに由来する。

ソーシャルメディアでは、ユーザーの行動履歴などから関連性の高いコンテンツを優先的に表示したり、無限スクロールによってタイムラインに次々とコンテンツ表示したりなど、ユーザーの興味関心を引き続けて離脱を防ぐ仕組みが取られていることが多い。

2021年にアメリカのケイトリン・ウーリー(Kaitlin Woolley)とマリッサ A. シャリフ(Marissa A. Sharif)が論文「Down a Rabbit Hole: How Prior Media Consumption Shapes Subsequent Media Consumption」にて発表した。

ネイキッドドメイン

ネイキッドドメイン(naked domain)とは、インターネット上のIPアドレスを識別しやすくするために付けられた識別名「ドメイン」のうち、「www」などのホスト名を含まないもののこと。URLが「https://www.example.com/」であればネイキッドドメインは「example.com」に該当する。

そもそも正確には「ネイキッドドメイン」は「ドメイン名」そのものである。しかし、一般的な認知として「www.example.com」のようにホスト名とドメイン名をつなげたFQDN(完全修飾ドメイン名)はドメイン名と誤解されやすく、また文脈によってはそれをドメインと呼ぶこともある。それと明確に区別するためにあえて「ネイキッドドメイン」として示したレトロニムの一種ともいえる。

パブサ(パブリックサーチ)

「パブサ」とは、自分以外の人(有名人、知人)や店舗、会社、作品などの名前をインターネットで検索すること。その人やお店、作品などの評判や口コミを調べるために検索することである。「パブリックサーチ」の略で、日本でのスラング的表現である。検索エンジンによるインターネット検索だけでなく、X(Twitter)やInstagramなどのソーシャルメディア(SNS)の検索も多用される。

「エゴサ」との対比で登場した言葉と考えられる。「エゴサ」は自分自身のことを検索する自己検索「エゴサーチ (egosearching)」に由来するが、検索対象を自己ではなく「他者」にしたものが「パブサ」である。英語ではその意味では「public search」という表現は用いず、「パブサ」の元となる「パブリックサーチ」は日本固有の表現である。

実績解除

実績解除とは、多くの人が経験するような物事や自身による物事のリストを「実績」と見立て、それを初めて経験したり達成することを指す。スラング的表現である。

もともとはゲーム領域で用いられていた用語に由来する。ゲーム提供側があらかじめ準備した条件や目標、例えば「アイテムを○○個集める」「相手を○○人倒す」といったものが「実績」に該当する。これをクリアすることで「実績(のロック)が解除されました」というメッセージが表示され、ユーザーは条件やミッションの達成度を知ることができる。

ここから派生し、多くの一般人が経験するような物事や、自身による「やりたいことリスト」などをあらかじめ設定された「実績」と見立て、それを経験することを「実績解除」「実績を解除した」と呼ぶようになった。ゲームの主人公のように、楽しみながら自身の経験値を積み重ねている様子を表していると言える。

NGL (not gonna lie, ぶっちゃけ、正直言って)

NGLとは、「not gonna lie」の略で、「正直言って」「ぶっちゃけ」「マジな話、嘘じゃなく」を意味する英語の略語、インターネットスラングである。「gonna」は「going to」の省略の表現で、「not gonna lie」の表現も同様の意味で用いられる。自分の正直な感想を言うときに用いたり、また文脈によっては誰かをからかったりして冗談を言う際などにも用いる。

チャットやソーシャルメディア、ショートメッセージといったデジタルコミュニケーションで、カジュアルな表現として用いられる。類似の表現に「TBH (to be honest, 正直に言うと)」や「IMAO (in my arrogant opinion, ぶっちゃけ)」などがある。

WBS (work breakdown structure, 作業分解構造)

WBS(work breakdown structure)とは、プロジェクトを管理する際に各工程をタスクに細分化して階層構造として一覧にしたものである。プロジェクトマネジメント手法の一つ。「作業分解構造(図)」とも呼ばれる。

各工程を細かなタスクのレベルに分解することでプロジェクト全体を把握しやすくなるだけでなく、担当者が行うべき作業の洗い出しや進捗管理、成果物の評価も行いやすくなる。細分化した要素に対して、開始日や期限、担当者などの情報を加える場合もある。

プロジェクトを階層構造のタスクに分解したものであり、時間軸に沿った表現である必要はない。分解したタスクを進捗管理する際に用いられるのが、時間軸を伴った表現のガントチャートや、ステータス別に管理する「かんばん方式」である。

ATH (all-time high, 過去最高)

ATHとは、「all-time high」の略で、「過去最高値」「史上最高」「最高記録」を意味する英語の略語である。数値や記録が過去にわたって一番高い数値を出した際に用いる。経済市場や気象、近年では仮想通貨市場などさまざまな領域で用いられる。

ATHに対して、「過去最低値」を意味する表現は「ATL (all-time low)」である。

地政学的リスク

地政学的リスク(geopolitical risk)とは、地理的な位置関係によって特定の地域における政治的、社会的、軍事的な緊張が高まるリスクのこと。特に経済や投資の側面における不透明さや不確実性を挙げる際に用いられる。地政学は、地理的な条件を軸に国際関係や国家戦略を分析考察する学問である。

特定地域にて地政学的な課題がある場合、その周辺の地域や世界全体の消費および投資にネガティブな影響を与える。例えば戦争やテロの勃発により資源や商品の調達が困難になったり価格上昇を招いたりし、企業の業績悪化や経済の停滞を招くことになる。

MFAサイト (made for advertising)

MFA(made for advertising)もしくは「MFAサイト」とは、広告収益を得ることのみを目的としたWebサイトのこと。ページの多くの領域が広告掲載で占められ、トラフィックを集めやすいコンテンツやセンセーショナルな見出しによる低品質なWebサイトであることが多い。生成AIによる自動作成コンテンツを含むことがある。

MFAは「made for advertising」の略。運用型広告の詐欺であるアドフラウドの一種とも言えるが、巧妙に作成運用されたMFAサイトは表面的にはそれとはわからない場合もある。

一般的にWebサイトに掲載される広告の一定量は運用型広告であり、広告枠の入札は自動で行われる。その仕組みにより企業が出稿した広告はさまざまなWebサイトの広告枠に掲載されるが、広告収益の最大化のみを意図した低品質なMFAサイトにも掲載されることになる。広告が広告主のイメージ低下を招くようなWebサイトに掲載されていないかなどを仕組み化したアドベリフィケーションも行われているが、根本的な解決には至っていない。

スラッジ

スラッジ(sludge)とは、人々の行動をより良いものへと誘導する手法や仕掛けである「ナッジ」を悪用して、それを阻んだり不利な方へ誘導したりする手法や仕掛けのこと。「負のナッジ」と言える。もともとは英語で「泥」「ぬかるみ」を意味する単語である。

行動経済学の知見に基づく「ナッジ」は、人々がより良い行動を自発的に選択するよう促すものであり、本来は合理的で正しい行動を取れずに困っている人を助けるために用いるべきものである。それに反して「スラッジ」はナッジを悪用して使用者の私欲のために利用されることが多い。

スラッジは、「その人にとって望ましくない選択に誘導する」ものと「その人にとって望ましい選択を妨害する」ものに大きく分けられる。前者には「不当に高額なプランを契約させる」、後者には「キャンセルや退会を不当に難しくする」といった例が挙げられる。いずれにせよユーザーにとっては不利益となる仕掛けであり、望ましくない手法である。

「ナッジ」を提唱したアメリカの行動経済学者リチャード・セイラー(Richard H. Thaler)と行動経済学者で法学者でもあるキャス・サンスティーン(Cass R. Sunstein)が、それと対立する概念として命名した。

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OSINT (Open-Source Intelligence, オシント)

「OSINT (Open-Source Intelligence, オープンソース・インテリジェンス)」とは、一般に公開されている情報を収集、分析、突合し、独自の有用な情報に変換して活用できる状態にする手法のことである。「OSINT」を「オシント」と読むことがある。もともとは国家レベルの国防や軍事領域における情報収集手法であり、政府や軍、ジャーナリストや調査会社などが活用する。

一般に公開されている情報は、書籍や新聞をはじめとした出版物、ニュースなどのメディアの情報、インターネット上の情報、街中の配布物や落書き、人々の会話に至るまで、あらゆるものが対象となる。

公開情報から重要な情報へと変換する手法ではあるものの、無条件、無制限に扱って良いわけではない。利用条件によっては例えばプライバシーの侵害に該当し、法に触れる可能性もある。

インターネットの普及によりOSINTを悪用したサイバー攻撃が行われたり、またその攻撃者の特定といった防御の側面においてもOSINTが用いられるなど、インターネットセキュリティの側面でも注目を集めている。

ブランドセイリエンス(ブランドの顕現性)

ブランドセイリエンス(brand salience)とは、購入をはじめとしたさまざまな場面でそのブランドが想起されやすいことを指す。ブランドの思い出しやすさや存在感とも言える。ブランドの「突出性」「顕現性」と訳されることがある。単に「セイリエンス」と用いることもある。

常にそのブランドのことを考えているわけではないが、何かのきっかけやシチュエーションでそのブランドを思い出しやすい状態のことである。特定カテゴリーにおいて最初に挙がるブランド「トップオブマインド(第一想起)」などと類似するが、トップオブマインドはブランドセイリエンスの一側面と言える。例えばカテゴリーを指定しない「食事」という広範囲の状況で特定のハンバーガーチェーンを想起するのはブランドセイリエンスである。

「salience」は「突出」「顕著な特徴」などを意味する英語である。

スパイクする

金融の領域やビジネス領域における「スパイクする (spike)」とは、何かの値が短期間で急激に変動することを意味する。金融市場において株価や為替が瞬間的に高値や安値を付ける現象として用いられることが多い。急激に上昇しその後下降するまでの突出したグラフの山の形がスパイクである。

ビジネスやITの領域においても、ネットワーク回線やシステムの処理能力などに対して通常では見られない著しい負荷や利用が見られた際に用いられる。急激な増加や上昇を指してそう呼ばれるが、平常時に戻るまでの状態がスパイクである。

英語の「spike」が日本語として動詞化したものである。英語の「spike」には「尖ったもの」の意味がある。釘など先の鋭く尖ったものを由来とするが、グラフが急上昇して急下降する形状もスパイクであり、それに準ずるものである。