地政学的リスク

地政学的リスク(geopolitical risk)とは、地理的な位置関係によって特定の地域における政治的、社会的、軍事的な緊張が高まるリスクのこと。特に経済や投資の側面における不透明さや不確実性を挙げる際に用いられる。地政学は、地理的な条件を軸に国際関係や国家戦略を分析考察する学問である。

特定地域にて地政学的な課題がある場合、その周辺の地域や世界全体の消費および投資にネガティブな影響を与える。例えば戦争やテロの勃発により資源や商品の調達が困難になったり価格上昇を招いたりし、企業の業績悪化や経済の停滞を招くことになる。

MFAサイト (made for advertising)

MFA(made for advertising)もしくは「MFAサイト」とは、広告収益を得ることのみを目的としたWebサイトのこと。ページの多くの領域が広告掲載で占められ、トラフィックを集めやすいコンテンツやセンセーショナルな見出しによる低品質なWebサイトであることが多い。生成AIによる自動作成コンテンツを含むことがある。

MFAは「made for advertising」の略。運用型広告の詐欺であるアドフラウドの一種とも言えるが、巧妙に作成運用されたMFAサイトは表面的にはそれとはわからない場合もある。

一般的にWebサイトに掲載される広告の一定量は運用型広告であり、広告枠の入札は自動で行われる。その仕組みにより企業が出稿した広告はさまざまなWebサイトの広告枠に掲載されるが、広告収益の最大化のみを意図した低品質なMFAサイトにも掲載されることになる。広告が広告主のイメージ低下を招くようなWebサイトに掲載されていないかなどを仕組み化したアドベリフィケーションも行われているが、根本的な解決には至っていない。

スラッジ

スラッジ(sludge)とは、人々の行動をより良いものへと誘導する手法や仕掛けである「ナッジ」を悪用して、それを阻んだり不利な方へ誘導したりする手法や仕掛けのこと。「負のナッジ」と言える。もともとは英語で「泥」「ぬかるみ」を意味する単語である。

行動経済学の知見に基づく「ナッジ」は、人々がより良い行動を自発的に選択するよう促すものであり、本来は合理的で正しい行動を取れずに困っている人を助けるために用いるべきものである。それに反して「スラッジ」はナッジを悪用して使用者の私欲のために利用されることが多い。

スラッジは、「その人にとって望ましくない選択に誘導する」ものと「その人にとって望ましい選択を妨害する」ものに大きく分けられる。前者には「不当に高額なプランを契約させる」、後者には「キャンセルや退会を不当に難しくする」といった例が挙げられる。いずれにせよユーザーにとっては不利益となる仕掛けであり、望ましくない手法である。

「ナッジ」を提唱したアメリカの行動経済学者リチャード・セイラー(Richard H. Thaler)と行動経済学者で法学者でもあるキャス・サンスティーン(Cass R. Sunstein)が、それと対立する概念として命名した。

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OSINT (Open-Source Intelligence, オシント)

「OSINT (Open-Source Intelligence, オープンソース・インテリジェンス)」とは、一般に公開されている情報を収集、分析、突合し、独自の有用な情報に変換して活用できる状態にする手法のことである。「OSINT」を「オシント」と読むことがある。もともとは国家レベルの国防や軍事領域における情報収集手法であり、政府や軍、ジャーナリストや調査会社などが活用する。

一般に公開されている情報は、書籍や新聞をはじめとした出版物、ニュースなどのメディアの情報、インターネット上の情報、街中の配布物や落書き、人々の会話に至るまで、あらゆるものが対象となる。

公開情報から重要な情報へと変換する手法ではあるものの、無条件、無制限に扱って良いわけではない。利用条件によっては例えばプライバシーの侵害に該当し、法に触れる可能性もある。

インターネットの普及によりOSINTを悪用したサイバー攻撃が行われたり、またその攻撃者の特定といった防御の側面においてもOSINTが用いられるなど、インターネットセキュリティの側面でも注目を集めている。

ブランドセイリエンス(ブランドの顕現性)

ブランドセイリエンス(brand salience)とは、購入をはじめとしたさまざまな場面でそのブランドが想起されやすいことを指す。ブランドの思い出しやすさや存在感とも言える。ブランドの「突出性」「顕現性」と訳されることがある。単に「セイリエンス」と用いることもある。

常にそのブランドのことを考えているわけではないが、何かのきっかけやシチュエーションでそのブランドを思い出しやすい状態のことである。特定カテゴリーにおいて最初に挙がるブランド「トップオブマインド(第一想起)」などと類似するが、トップオブマインドはブランドセイリエンスの一側面と言える。例えばカテゴリーを指定しない「食事」という広範囲の状況で特定のハンバーガーチェーンを想起するのはブランドセイリエンスである。

「salience」は「突出」「顕著な特徴」などを意味する英語である。

スパイクする

金融の領域やビジネス領域における「スパイクする (spike)」とは、何かの値が短期間で急激に変動することを意味する。金融市場において株価や為替が瞬間的に高値や安値を付ける現象として用いられることが多い。急激に上昇しその後下降するまでの突出したグラフの山の形がスパイクである。

ビジネスやITの領域においても、ネットワーク回線やシステムの処理能力などに対して通常では見られない著しい負荷や利用が見られた際に用いられる。急激な増加や上昇を指してそう呼ばれるが、平常時に戻るまでの状態がスパイクである。

英語の「spike」が日本語として動詞化したものである。英語の「spike」には「尖ったもの」の意味がある。釘など先の鋭く尖ったものを由来とするが、グラフが急上昇して急下降する形状もスパイクであり、それに準ずるものである。

二つ名

二つ名とは、本名以外の正式名称ではない呼び名のことである。「別名」や「あだ名」を含む場合もあるが、その対象の特徴や性質、印象を端的に表現した言い回しを「あだ名」「通り名」などと区別して「二つ名」と呼ぶことが多い。読みは「ふたつな」。

個性的な戦国武将、著名人、スポーツ選手(チーム)、政治家などに対して、尊敬や畏怖、崇拝の念を込めて付けられることが多い。「甲斐の虎」「東洋の魔女」「平成の怪物」「浪速のジョー」といった著名な表現例がある。

近年、お笑いのテレビバラエティー番組でお笑い芸人に付けられる異名キャッチコピーなども「二つ名」に該当する。

アウトリーチ

アウトリーチ(outreach)とは、「外に向かって手を差し伸べること」を意味する英語だが、社会福祉などの領域において援助が必要でありながら自ら援助にアクセスできない人々に対して公的機関などが働きかけて支援を行うことを表す。「アウトリーチ活動」のように用いる。

生活上の困難を抱えていながら援助の必要を自覚していない、もしくはその相談に出向こうとしない人々には支援が届かないことが多い。そのような人たちに対して働きかける一連の取り組みのことである。領域によっては「訪問支援」のことを指す場合もあるが、必ずしも訪問支援だけがアウトリーチではない領域もある。

社会福祉の領域以外でも、公的機関や文化施設がその活動に関心を持ってもらうことを目的として行う出張活動や出張イベントのことを指すことがある。その施設外で行われるワークショップやコンサートなどが該当する。

ビジネスの領域においても、潜在顧客へのアプローチを目的としてその界隈の著名人に自社の商品やサービスを売り込んだり関係性を作ったりするマーケティング活動のことを指す。「アウトリーチマーケティング」のように用いる。影響力を軸にアプローチする点でインフルエンサーマーケティングと類似する。

アトム化(原子化)

「アトム化」とは、「孤立化」という意味で用いられることが多い。もしくは「これ以上分割できない小さな単位に分割する」という意味でも用いられる。「原子化」ともいう。

「アトム」は「原子」を意味するが、ギリシャ語で「それ以上分割できないもの」という意味の「atomos」に由来する。

例えば社会などの共同体が近代化する中で、人間が労働の役割を持った機械部品のような存在になってしまい、人間らしさや個人としての存在を失ったり周囲との関係が希薄化したりする様子や現象を「人間疎外」「アトム化(原子化)」と呼ぶことがある。

本来の共同体は人間の集まりである。しかし、近代化が進み技術が発展する中で機械化されたものが増え、それを維持するために人間が労働する、つまり機械が人間を必要としその維持を目的として人間が機能するという状況が生まれてきたということである。

FMCG (fast-moving consumer goods, 日用消費財)

FMCGとは、「fast-moving consumer goods」の略で、消費者向けの日用消費財のことである。比較的短期間で消費される低価格の製品であり、食料品や飲料、洗剤や洗面用品、化粧品、一般用医薬品、文房具、消耗品などの非耐久消費財が該当する。

コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ディスカウントストアなどの小売店は、限られた商品棚の回転率を上げるためにこのFMCG(日用消費財)を中心に取り扱っている。