ゼロリスク・バイアス

ゼロリスク・バイアス(zero-risk bias)とは、特定の小さなリスクを完全に無くすことに対して高い意識を持っているが、それよりも重要な全体のリスクには注意を払わない傾向のこと。部分的なリスクを過度に評価して完全な排除を望み、それを全体のリスク低減よりも優先させようとする心理的作用である。健康や環境などの安全に関する事象で起こりやすい。

特定の小さなリスクを排除することで心理的安全性を得てしまい、それ以外のリスクへの意識が弱まって結果としてより大きなリスクを負うことにつながる。「もし何かあったらどうするのか?」をはじめとした「ゼロリスク志向(思考)」はこのバイアスによるものとも言える。

あらゆる事象において、基本的にはリスクをゼロにすることはできない。一方で、大きな事象のリスクの低減よりも特定の小さなリスクの排除の方が容易であることもある。また人は確率などの仮説に対して感覚的な判断を下しやすい。

そのような中で、自身に直接関係するようなリスクを完全にゼロにすることの方が、一見自分には縁遠いと感じる大きな危険性を低減することよりも安全であると誤認してしまう。また身近なリスクをゼロにすることで犠牲になる他の事象にも無関心になりやすい。その結果、大きなリスクは低減せず依然として残ってしまう。